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2024.10.01

10月のお話し

小倉百人一首に秋の歌は16首採録されていますが、わび茶や禅の文化へと連なる、不足の美を詠んだ歌が多いようです。ある茶人は侘び寂びを例えて、暗い部屋の中に飾られた一輪挿しにスポットライトを当てることで、その美を際立たせる表現法と説明されていました。
一方で、昌泰元年(898)10月、宇多上皇の宮滝(奈良県吉野)御幸(みゆき)に同行した菅原道真公が詠んだ「このたびは幣(ぬさ)もとりあへず手向山(たむけやま)もみぢの錦(にしき)神のまにまに」の現代語訳は、この度の旅は急なことで、道中の安全を祈念する神さまへの捧げものとして用いられる幣の用意もできませんでした。この錦のように美しい紅葉をお供えしますので、どうぞ神さまの御心のままお受け取り下さい、となります。先ほどの例に倣うならば、ライトアップされた部屋いっぱいに鮮やかな花々を飾ることで美の世界を演出する表現になりましょうか。清秋の季節、心のままに紅葉の色彩を味わいましょう。合掌

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