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5月のお話し
キャンプの焚火などには心を落ち着かせるはたらきがあるようですね。火の神聖さをあらわす古語として『古事記』などには「産霊(むすひ)」という言葉があって、神名の一部として用いられたり、「万物を生み成長させる神秘で霊妙な力」の意味に用いられたりします。この語は生じるを意味する「産・むす」と、神霊を意味する「霊・ひ」との複合語であると解釈できるそうで、さらに「霊」と「火」とは「ひ」音が同じことから、霊魂の継承や連続性に火の儀礼が用いられることがありました。
現代に残る例として、出雲大社の火継式(ひつぎしき)が挙げられます。出雲の国を代々治めてきた千家氏(せんげし)の家長は、旧国造(くにのみやつこ)が亡くなると熊野大社に参向して火を鑽(き)り出し、その火で調理された料理を神前に供えるとともに自らも食べ、鑽り出された聖なる火は出雲大社に持ち帰られて後、国造の館において絶やしてはならないとされる秘儀です。旧国造の「霊」を象徴する聖なる「火」によって、新国造は出雲大社の祭祀と出雲国造(いずものくにのみやつこ)の称号を受け継ぐのです。仏壇やキャンドルの灯に、ご先祖さまを想ってみませんか。