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2024.07.02

7月のお話し

人は死ぬと別の世界に行くという信仰は古くからあったようで、行先として恐山や比叡山などの山の上や、竜宮伝説などで知られる海の彼方、黄泉の国などで知られる地の底などが想定されました。このなかで、亡くなった先祖を山上の他界に送る祖霊信仰の例としては、鎌倉時代から江戸時代の銘を持つ石板に先祖の戒名や施主名が彫られた板碑や、30cmほどの細長い石製卒塔婆に戒名などを彫刻したものなどが各地の霊山に数多く伝わっております。
これらの卒塔婆は、当時の民衆たちが死者の世界である霊山での先祖の安楽を願って、廻国聖や山伏などに供養を頼んだことの左証でありましょう。また、山形県の広い地域では、ご遺骨の一部を立石寺奥の院に納める風習が現代に伝えられますが、松尾芭蕉が元禄2年(1689)5月27日(新暦7月13日)に「閑さや岩にしみ入る蝉の声」と詠んだ立石寺の岩塔婆群も、納骨に併せて彫られたものでした。蝉の声にも先祖を想う夏の訪れです。合掌

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